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御蔵島のイルカは冬も島の周りにいるのか?

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御蔵島のイルカ(撮影:小木万布)

2014年2月。
関東では大変な積雪で外界から閉ざされ、陸の孤島となってしまった地域もあったようですね。
皆様のところは大丈夫でしたか?

ここ御蔵島では、雪こそほとんど降りませんでしたが、低気圧のたびに北東風やら西風やらで、海は大時化となりました。

毎年、2月は定期船の就航率が1年を通して最も低い月となります。
昨年の2月の就航率はたったの21%!

今年も例外なく欠航が続き、7日の上り便就航のあとに来たのは19日の朝。
6日に来た貨物船が次に着いたのは18日。

実に11日間、生鮮品などの食料だけでなく、郵便や宅急便が完全に停止。
本物の孤島っぷりが、今年も遺憾無く発揮されてしまいました。

御蔵島の桟橋(撮影:小木万布)

冬の御蔵島桟橋。西のテッパツで桟橋は完全に水没することもしばしばあります

あと1日貨物船が着かなければ、灯油の販売制限も計画されていたようです。
でもまぁ、毎年のことなので島民は「えれぇ吹くなぁ、けどしょうがねぇんきゃ(すごく風が吹き続けるね、でも仕方ないですね)」で済ませてしまっています。
もちろんニュースにもなりません。

そんな大時化の海でイルカはどうしているのでしょう?
そもそも「イルカは冬も御蔵の周りにいるか?」という疑問がもたげてきます(寒くてすいません)。

10年以上昔、冬のイルカを調べようと12月~2月に、5mmジャージウェットとフードで挑んだことがあります。

2001年当時、学生だった私はドライスーツなんて買える訳も無く、若さの特権である貧乏を、若さの特権である体力でカバーしていました。
ちなみに水温は、暖かいときで18℃くらい、寒いときで14℃くらい、気温は最高で10℃くらいです。

天候と相談しながら10回程度船を出した結果、ほとんどの調査でイルカを撮影することができました。
個体識別してみると、完全にいつものメンバーです。

つまり、船が出せるくらいの海況の時は、冬でも島の周りにいつものメンバーがいるようでした。

2008年と2009年は、観光協会発行のイルカ紹介本「いるかいないか」作成のために冬期間の撮影を行っています。
その時も、夏場と変わらない御蔵のイルカたちを見ることができました。
冬でも島の周りにイルカはいる、といって間違いなさそうです。

御蔵島のイルカ(撮影:小木万布)

2009年2月9日撮影のイルカ。見上げる空の青が薄くて冬っぽさが出ています

フロリダやサウスキャロライナなどでは、冬になるとイルカが移動することが報告されています。
あちらのイルカが移動する理由は、餌生物の密度が変わるから、と推測されていますが、御蔵の周辺は冬でも餌となる生物が沢山いるのかもしれませんね。

さて、大時化の後の御蔵島ではウグイスも鳴き始め、着実に春は近づいてきています。
風が吹き止んでから海が凪ぐまでの期間が、なんとなく短くなったように感じられると、いよいよ春です。

3月、御蔵では「今日から春!」と思える1日があります。
御蔵島のイルカウォッチングもあと半月ちょっとでシーズンインです。

引用文献
Irvine, A.B., Scott, M.D., Wells, R.S. and Kaufmann, J.H. 1981. Movements and activities of the Atlantic bottlenose dolphin, Tursiops truncatus, near Sarasota, Florida. Fish. Bull. 79(4): 671–88.

Fazioli, K.L., Hofmann, S. and Wells, R.S. 2006. Use of Gulf of Mexico coastal waters by distinct assemblages of bottlenose dolphins (Tursiops truncatus). Aquat. Mamm. 32: 212–22.

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